近藤医院のBlog

暑い日は熱中症だけでなく血管の詰まりにもご用心!

2026年07月21日 00:10

連日、命に関わるような厳しい暑さが続いていますね。

「熱中症に気をつけましょう」というニュースは毎日耳にすると思いますが、実はこの時期、熱中症と同じくらい、あるいはそれ以上に警戒している病気があります。

それが、「脳梗塞」や「心筋梗塞」といった、血管が詰まる致命的な病気です。


「冬の病気じゃないの?」と思われるかもしれませんが、実は夏の猛暑日もこれらの病気のガチガチの危険地帯です。今回は、世界的な医学論文データも交えながら、その理由と対策をお話しします。

💡 世界的な医学誌『The Lancet』が警告する「温度のしきい値」

世界的に権威のある医学雑誌『The Lancet』などに掲載された大規模な研究(Gasparrini A, et al. 2015)によると、人間の死亡リスクは「ある一定の気温(しきい値)」を超えたところから、急激に右肩上がりに上昇することが分かっています。

その上昇分の多くを占めるのが、実は熱中症そのものというよりも、心臓や血管の病気(心血管疾患)なのです。近年のメタアナリシス(The Lancet Planetary Health, 2022)でも、気温が1℃上がるごとに心血管疾患による死亡リスクが2.1%ずつ上昇するというデータが報告されています。

では、なぜ暑くなると血管が詰まりやすくなるのでしょうか?

🩸 原因は「脱水」による血液のドロドロ化

理由は大きく分けて2つあります。

① 血液が「濃縮」されてギチギチになる

猛暑の中にいると、私たちは自覚している以上に大量の汗をかきます。体内の水分が失われると、血管の中を流れる血液の水分も減り、まるで煮詰まったスープのように血液の粘り気(粘稠度)が高くなります。 これが、医学的に言う「血液の濃縮状態」です。血液がドロドロになると、血管の壁に血の塊(血栓)が作られやすくなり、それが脳の血管に詰まれば「脳梗塞」、心臓の血管に詰まれば「心筋梗塞(急性冠症候群:ACS)」を引き起こします。

② 心臓が「フル稼働」で疲弊する

体は上がった体温を下げようとして、皮膚の血管を広げ、心拍数を上げて血液を外側にどんどん送り出そうとします。つまり、暑いだけで心臓はマラソンをしているような大忙しの状態です。ここに脱水が加わると、血圧が不安定になり、心臓への負担はピークに達します。

⚠️ 「喉が渇いた」ではもう遅い?クリニックからの3つの対策

「自分は大丈夫」と思わずに、以下の3つの対策を今日から徹底してください。


  • 喉が渇く前に「時間割り」で飲む

    人間の脳が「喉が渇いた」と認知した時点ですでに脱水は始まっています。デスクワークでも外出先でも、「1時間にコップ1杯」など、時間を決めて機械的に水分を補給する癖をつけましょう。

  • お茶やコーヒーもOK、ただし「水・麦茶」をベースに

    「コーヒーや緑茶は水分補給にならない」と言われることもありますが、極端な多量摂取でなければ、これらも立派な水分補給になります。ただし、カフェインの摂りすぎや胃への負担、夜間の睡眠の質を考慮し、1日のベースは「水や麦茶」とし、お茶やコーヒーは合間のリフレッシュとして上手に組み合わせるのがベストです。※アルコール(ビールなど)だけは強い利尿作用があるため、水分補給にはならず、むしろ同量以上の水が必要です。

  • 夜間の「エアコンけちり」は命取り

    「エアコンをつけたまま寝ると体に悪い」というのは昔の話です。近年の医学データでも、夜間の室温上昇が睡眠の質を下げ、翌朝の心筋梗塞リスクを高めることが指摘されています。室温は26〜28℃を目安に、朝までエアコンはつけっぱなしにしてください。

高血圧、脂質異常症(コレステロール)、糖尿病などの持病がある方や、タバコを吸われる方は、もともと血管が傷つきやすいため、夏の血栓リスクがさらに高まります。

  • 「なんだか急に強い胸の痛みや圧迫感がある」

  • 「片方の手足に力が入らない、しびれる」

  • 「ろれつが回らない、言葉がうまく出ない」

これらは非常に危険なサインです。もしご自身やご家族にこのような症状が出たら、絶対に様子を見ずに、すぐに救急車を呼ぶか、医療機関を受診してください。


当院では、夏場の水分管理や持病のコントロール、動脈硬化の検査なども行っております。「今年の暑さはちょっと体がきついな」と感じたら、いつでもお気軽にご相談くださいね。一緒にこの厳しい夏を乗り切りましょう!


【今回の記事の参考文献】

  • Gasparrini A, et al. Mortality risk attributable to high and low ambient temperature: a multicountry observational study. The Lancet. 2015.

  • Liu J, et al. Heat exposure and cardiovascular health outcomes: a systematic review and meta-analysis. The Lancet Planetary Health. 2022.

  • Chen K, et al. Triggering of Acute Myocardial Infarction by Hot and Cold Temperatures. Circulation. 2019.