近藤医院のBlog

キリンの高血圧

2026年05月29日 23:12

前回血圧の正しい測り方をお伝えしました。


健康診断のたびに一喜一憂する”血圧”


私たち人間の
高血圧基準家庭血圧で 135/85mmHg 以上、診察室血圧では 140/90mmHg 以上と定義されています。

私たちが少し血圧が高くなっただけで治療の対象になるのは、血管や心臓を含めた内臓への負担を減らすためです。


しかし、地球上には人間の「最高血圧の2倍以上」という、とてつもない超高血圧をデフォルトとして生きる動物がいます。ご存じ、地上で最も背の高い動物、キリンです。


キリンの心臓付近の血圧は、上(収縮期血圧)が250〜300 mmHgに達します。人間なら脳出血を起こしてもおかしくない極限の数値ですが、彼らにとってこれは「生きるための必然」です。


キリンの心臓から頭部までは約2メートル。重力に逆らって脳まで血液を押し上げるには、凄まじい圧力が必要です。心臓から送り出された血液は長い首を上るにつれて圧力が下がり、脳に到達する頃には約110 mmHgと、人間の脳と同等の絶妙な血圧に落ち着きます。


しかし、ここで一つの疑問が生じます。「水を飲むために頭を下げた瞬間、脳に血がパッと集まって血管が破裂しないのか?」という点です。


ここからがキリンの真骨頂です。


 まず、キリンの首の付け根(脳の底部)には、「ワンダーネット(奇驚網)」と呼ばれる網の目のような微細な血管網が存在します。頭を下げたときは、この網がクッションの役割を果たして急激な血流を吸収し、さらに頸静脈にある特殊な「弁」が血液の逆流を防ぎます。これにより、急な起立性低血圧(立ちくらみ)や脳溢血を防いでいるのです。


 また、足元にかかる最大260 mmHg以上の圧倒的な水圧(血管圧)に対しては、極めて強靭で硬い皮膚と皮下組織が「天然の弾性ストッキング」として機能し、下半身のうっ血や浮腫(むくみ)を防いでいます。


 人体の繊細な血圧管理システムも驚異的ですが、重力という物理的限界を「超高血圧+特殊構造」で克服したキリンの循環器系は、まさに進化が生んだ極上のインテリジェンスと言えるのではないでしょうか。


 ただし、キリンと違って我々人間において高血圧が持続すると心臓病、脳血管病につながることがわかっています。日本における高血圧者は約4300万人とされ、降圧薬服用者は約2400万人、このうち治療により血圧が良好にコントールされているのはわずか27%程度と言われています。


 血圧が高めになってきた方、検診で指摘された方などは気軽に当院までご相談ください!